米国公認会計士 試験情報 (U.S. CPA Exam Guide)

2017年4月より実施される新試験制度の内容 

       (from AICPA; Practice Analysis Final Report)

2015年に公表された改正案に対するコメントを受けて、2016年4月4日、AICPAが最終報告書を公表致しました。

 

http://www.aicpa.org/BecomeACPA/CPAExam/nextexam/DownloadableDocuments/2016-practice-analysis-final-report.pdf

 

ここでは、上記のAICPAの最終報告書に基づき、受験生にとって重要と思われる点を取り上げることと致します。

 

新試験制度の実施時期

新試験制度の実施時期は、2017年4月からとされています。

 

AICPAの最終報告書の公表から起算すると、約1年後となります。

 

試験科目

新試験における試験科目は、現在と変更はありません。

 

したがって、受験生は、これまで通り、以下の4つの科目に合格しなければなりません。

 ・AUD(監査及び証明)

 ・BEC(ビジネス環境及び諸概念)

 ・FAR(財務会計及び報告)

 ・REG(法規)

 

各科目の試験時間

現在3時間であるREGとBECの試験時間が、それぞれ1時間増加します。

これにより、すべての科目の試験時間が4時間となります。

 

受験料

BECとREGは、試験時間の増加に伴い、受験料が引き上げられます。

具体的な受験料については、NASBAと各州公認会計士審査会が決定します。

 

標準休憩時間の新設

新試験制度においては、すべての試験科目に対して、テストレットの合間で、その試験時間の中間点と思われる時点に、自動的に15分の標準休憩時間が新たに設けられることとなりました。

この標準休憩時間は、試験時間には含まれません。

 

受験生は、標準休憩時間を利用することが可能ですが、もし、標準休憩時間の利用を拒否した場合には、試験の終了時刻に到達するまでの間、改めて標準休憩時間を利用することはできません。

 

新設される標準休憩時間のほかに、各テストレットの合間に受験生が休憩を取る場合には、従来通り、その休憩時間は試験時間に含まれることになります。

 

試験の結果発表までの期間

現在、試験の結果発表までの期間は、約20日間とされています。

新試験制度においても、この期間は維持されます。

 

しかし、制度が移行する2017年のみ、試験の結果発表までの期間は、次の通りになることが予想されます。

 ・2017年1月~  (第1四半期)・・・約20日間

 ・2017年4月~  (第2四半期)・・・約10週間(←新試験制度移行)

 ・2017年7月~  (第3四半期)・・・約10日間

 ・2017年10月~(第4四半期)・・・約10日間

 

新試験制度の移行当初となる2017年第2四半期については、第2四半期が終了した後、10週間を要することが予定されていますので、旧試験制度における一部合格科目を保有している方については、受験対策上、十分注意が必要です。

 

受験可能期間の延長

これまでも、新試験制度に移行する際は、移行直前に受験生が増加していました。

 

そして、2017年4月の試験制度移行に際しても、移行直前における受験生の増加が予想されることから、2016年第2四半期から、受験可能期間(Testing Window)を10日間延長することとされています。

つまり、AICPAが最終報告書を公表した2016年4月である、2016年第2四半期から、受験可能期間が10日間延長されることになります。

 

この10日間の受験可能期間の延長は、2017年第2四半期を除いて、新試験制度実施後である2017年第4四半期まで実施されます。

 

受験生の皆様におかれましては、是非、この受験可能期間の延長制度を有効に利用して頂ければと思います。

 

なお、旧試験制度で受験するメリットとして、以下の点が挙げられます。

・比較的基本的な知識内容を問う、旧試験制度の出題傾向で受験すること

 が可能

・BECとREGについては、旧受験料で受験することが可能

・一部合格科目の有効期間が満了する前に、全科目に合格することが可能

 

一部合格科目の有効期間

一部の科目に合格した場合の合格科目の有効期間は18カ月とされており、現在と変更がありません。

 

新試験実施前に一部の科目に合格した場合の取扱い

結論から言うと、新試験制度の実施前後で、合格科目の取扱いとその有効期間について、特に変更はありません。

 

つまり、新試験が実施される2017年4月より前に一部の科目に合格した場合には、その合格科目は、その科目に合格してから18カ月の間は、新試験実施後においても一部科目合格として取り扱われます。

 

そして、合格した科目が18カ月を経過した場合には、その科目については、新試験制度における科目を受験しなければなりません。

 

各科目の出題形式ごとの問題数と配点

各科目の出題形式と、それぞれの出題形式ごとの問題数と配点は、以下の通りです。

 

AUD(監査及び証明)

 Multiple Choice(選択問題)・・・・・・・・72問(配点50%)

 Task-Based Simulation(課題型シミュレーション)・・8~9問(配点50%)

 

BEC(ビジネス環境及び諸概念)

 Multiple Choice(選択問題)・・・・・・・・62問(配点50%)

 Task-Based Simulation(課題型シミュレーション)・・4~5問(配点35%)

 Written Communication(文章伝達) ・・・・3問(配点15%)

 

FAR(財務会計及び報告)

 Multiple Choice(選択問題)・・・・・・・・66問(配点50%)

 Task-Based Simulation(課題型シミュレーション)・・8~9問(配点50%)

 

REG(法規)

 Multiple Choice(選択問題)・・・・・・・・76問(配点50%)

 Task-Based Simulation(課題型シミュレーション)・・8~9問(配点50%)

 

 

従来の試験制度と比較すると、以下の表の通りです。

 

 

 

MC

Simulation

Written Communication

 

 

~2016

2017~

~2016

2017~

~2016

2017~

AUD

 問題数

90

72

7

8~9

配点

60%

50%

40%

50%

FAR

問題

90

66

7

89

配点

60%

50%

40%

50%

REG

問題数

70

76

6

89

配点

60%

50%

40%

50%

BEC

問題数

72

62

45

3

3

配点

85%

50%

35%

15%

15%

 

昨年の秋に公表された改正案と比較すると、REGのMC(選択問題)の数だけが予想問題数の範囲(70~75問)を超えていることが分かります。

 

さらに、REGは、試験時間の増加に伴い、MCとSimulationの両方とも、出題問題数が増加することとなります。

 

出題レベル

各科目の出題レベルは、下の表の通りです。

 

従来は、記憶(Remembering)と理解(Understanding)の能力と、適用水準(Application-Level)の能力が、ほぼ均等に出題されていました。

 

これに対して、新試験制度では、従来よりも高度な知識水準とされる、分析能力(Analysis-Skill)が問われることとなります。

 

さらに、AUD(監査及び証明)においては、本試験中、最高レベルの知識水準とされる、評価能力(Evaluation-Skill)が問われることとされています。

 

科目

記憶

(Remembering)

理解

(Understanding)

適用

(Application)

分析

(Analysis)

評価

(Evaluation)

Old

New

Old

New

Old

New

Old

New

AUD

50%

30-

40%

50%

30-

40%

15-

25%

5-

15%

BEC

50%

15-

25%

50%

50-

60%

20-

30%

FAR

50%

10-

20%

50%

50-

60%

25-

35%

REG

50%

25-

35%

50%

35-

45%

25-

35%

 

(注)BECの適用(Application)には、文章伝達(Written Communication)の能力が含まれる。

 

AICPAの最終報告書では、試験科目ごとに、上記の各能力水準が問われる内容が明記されています。

 

REGの出題内容と割合

現在、REGにおけるビジネスローの出題割合は、17~21%です。

改正案では、これを5~10%に引き下げると提案していました。

 

この改正案の内容に対し、ビジネスローの基本的知識の内容と、会計及び監査との関係から判断して、ビジネスローの出題割合としては、あまりにも低いという批判があったということです。

 

こうした批判を受けて、REGにおけるビジネスローの出題割合を、改正案に示された5~15%から、10~20%に引き上げることとなりました。

 

これに伴い、REGの中で、財産取引(Property Transaction)に対する連邦税を3%、エンティティー(Entity)に対する連邦税を2%、それぞれ引き下げることとなりました。

 

結果として、新試験制度では、REGにおける各分野の出題割合は、以下の通りとなります。

 ①倫理・職業家責任・連邦税手続・・10~20%

 ②ビジネスロー・・・・・・・・・・10~20%

 ③財産取引に対する連邦税・・・・・12~22%

 ④個人に関する連邦税・・・・・・・15~25%

 ⑤エンティティーに対する連邦税・・28~38%

 

⑤のエンティティーに対する連邦税が、全5分野の中で最も高い割合を示しており、その重要性が歴然としています。

そのため、各エンティティー間の相違点を理解することが、受験対策上、不可欠となります。

 

また、ビジネスローについて、最終報告書では、改正案の出題割合から5%引き上げられましたが、それでも現在の出題割合である17~21%よりも、(特に最小値について)減少することとなりました。

 

かつては受験科目のひとつであったビジネスローについては、試験制度が改正される度に出題割合の減少が続いていました。しかし、今回のAICPAの最終報告書をもって、ビジネスローに対する出題割合の減少傾向は終息すると思われます。それでも、従来の試験制度と比較した場合、新試験制度におけるビジネスローの出題は、幾分、減少すると思われます。