米国公認会計士 試験情報 (U.S. CPA Exam Guide)

2015年9月 新試験制度の改正に関する情報

   (from JoA; Information for CPA Exam Changes)

2017年から実施される試験制度改正(案)について

本文は、Journal of Accountancyの編集責任者である、Ken Tysiac氏の文章を神山が翻訳したものです。

 

(原文である英文のHPアドレスは、この記事の下に記載しています。)

 

2015年9月1日

 

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AICPAは、業務上の責任が変更された専門家に対して、その変更を喚起させることが必要であることから、新たに資格を有するCPAに対して必要とされる、より高度に要求された能力を試すことを向上させるために設計された、統一CPA試験の変更を提案しました。

 

試験における変更案は、職業専門家の業務の進展に対して、試験が、その職業と歩調を合わせるために作成されたものです。

公開草案である、"Maintaining the Relevance of the Uniform CPA Examination,"『統一CPA試験の適合性の維持』は、201591日(火)に公表されました。

AICPAは、2017年中に実施する予定の試験の変更案に対して、コメントを募集しています。公開草案は、AICPAHPにて入手可能です。

なお、コメントの受付は、20151130日が期限とされています。

試験内容の最終的な決定とその形式については、2016年春に公表される予定となっています。

 

 

変更案によると、試験の科目数は、現在の4科目である、監査及び証明(AUD)、事業環境及び諸概念(BEC)、財務会計及び報告(FAR)、及び法規(REG)のままとなっています。

しかし、試験の内容に関連して、多くの変更が提案されました。

その変更案には、次の5つが含まれています。

 

 

CPA試験の変更案は、以下の内容を含む、より高度に要求された、認識能力を試すことを推進させることとしています。

・批判的考察 (Critical Thinking)

・課題解決 (Problem-Solving)

・分析能力 (Analytical Ability)

・専門家としての懐疑心 (Professional Skepticism) 

 

②各科目の試験の素案では、受験生に試されるべき知識と能力が示されています。これによると、その知識と能力は、新たに資格を取得するCPAの代表的な作業に直結するものとなっています。

試験の素案では、現在の専門的内容及び専門的能力に関する概要を改め、実務界、学者、規制当局、その他のより多くの情報を含むこととしています。

 

③改正後の試験において、タスク・ベースのシミュレーション(Simulation)の問題を増加させる予定です。これは知識とより高度な能力を結合した試験になるものと思われます。

特に、BECにおいては、はじめてミュレーションが出題される予定です。

AUDFARREGの科目では8問から9問の、そしてBECでは4問から5問の、シミュレーションが課される予定となっています。

  

④試験時間の合計は、14時間から16時間に増加します。つまり、各科目に対して、それぞれ4時間が割り当てられます。これは、BECREGの両科目に対して、シミュレーションが追加されることに対する便宜を図るために、それぞれの科目に対して1時間が追加に割り当てられるためです。なお、試験時間の拡大に伴い、両科目の受験料は増額することが予想されます。

 

AUDFAR、及びREGの各科目における、選択問題(MC)とシミュレーション(Simulation)の配点は、それぞれ約50%となる予定です。また、BECについては、選択問題(MC)が約50%、そしてシミュレーション(Simulation)が約35%、そして文書伝達(Written Communication)が約15%となる予定です。

 

 

以上の結果、現在と変更後の各科目における選択問題(MC)、シミュレーション問題(Simulation)、及び文書伝達(Written Communication)に対する問題数と配点は、次の表の通りとなります。

 

 

 

MC

Simulation

Written Communication

 

 

~2016

2017~

~2016

2017~

~2016

2017~

AUD

問題数

90

7075

7

8~9

配点

60%

50%

40%

50%

FAR

問題

90

6065

7

89

配点

60%

50%

40%

50%

REG

問題数

70

7075

6

89

配点

60%

50%

40%

50%

BEC

問題数

72

6065

45

3

3

配点

85%

50%

35%

15%

15%

 

(出典:AICPA公開草案、統一CPA試験の適合性の維持。配点を追記)

 

AICPAは、通常の試験の内容を検証するとともに、試験が公共の利益を保護するために、資格取得者として、合格当初に保有していることが必要とされる技術的な知識及び能力を評価するために、定期的に包括的な実務上の分析を行っています。そして、実務上の分析は、最低でも7年毎に完了しなければならないこととされています。

 

これまで、実務上の分析は、2001年と2008年に行われ、(いずれも3年後となる)2004年と2011年に更新された試験のバージョンが開始されました。

現在、提案されている更新は、昨年当初に開始された実務上の分析の結果です。分析に際して、データは、会計士審査会、会計事務所、学術機関、基準設定機関、諸産業、及び、専門家としての理念と強靭性を保護することに関心を抱くその他の方々から回収されました。

 

これまでの研究により、より高度に要求された能力を試すことを進展させると同時に、新たに資格を取得するCPAが、規則的に行う業務に直結した能力を有することを保証するために、専門家は、試験に対する変更を支持してきたことが明らかとなっています。

 

『新たに資格を取得したCPAに対して、従来よりも、さらに洗練された水準で、データを分析し、かつ、業務を履行することが求められていることに対して、我々は合意するものである。』

ある州会計士審査会の担当官は、AICPAからのコメントの要請に対して、上記のように回答するとともに、次のように述べています。

『そのため、試験が継続的に進化し、適切な水準で試験が行われることが、必要なのである。』

 

現在の試験は、一般に、記憶(Remembering)、理解(Understanding)に対する能力と、適用水準(Application-Level)の能力を、均等に評価しています。

試験に対する変更案は、新規に資格を得るCPAに対して、今日の職業上の要求に対する能力水準に、大きく焦点を当てています。そのため、今後の試験に対する変更案においては、およそ次の割合で、部分的に高水準の分析能力(Analysis Skill)が試されることとなります。

AUDからは、15~25%

BECからは、20~30%

FARからは、25~35%

REGからは、25~35%

さらに、AUD科目の試験においては、最高レベルの能力である、『評価(Evaluation)』が試されることになります。これは、AUDにおいて試される能力の、およそ5~15%を構成する予定です。

 

なお、試験の改正案に対するコメントは、以下のアドレスで受け付けています。

exposuredraft@aicpa.org.

 

 

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今回の改正案に対して、私、神山が感じた点を述べると以下の通りです。

 

AUD・・MC15~20問も減少するのに対して、MCに対する配点が10%しか減少しないのは朗報と思われるのですが、その内容について、最高レベルの『評価(Evaluation)』が導入されるのが気になります。必ずしも、易化したわけではなく、今後も十分注意して取り組まなければならない、最重要科目であると思われます。

 

FAR・・MC25~30問も減少するのに対して、配点が10%減少するだけです。シミュレーションが1~2問増加しますが、結果的に易化だと思われます。

それを示すのが、AUDFARを比較したMCとシミュレーションの増減数です。AUDではMC15~20減少し、シミュレーションが1~2増加するのに対して、FARではMC25~30問も減少し、シミュレーションが1~2増加することが予定されているのです。

これでお分かりの通り、両科目の差異は、FARの方が10問程度多くMCが減少することです。これは米国人が苦手とするFARに対する配慮ではないかと思われます。

 

REG・・MCの出題数はほぼ変わらないのに対して、配点は10%減少され、シミュレーションが2~3問増加することとなります。時間が1時間増えることになるため、これまでのように、時間に追われることは軽減されるものと思われます。REGに対しては、昨今、シミュレーションの重要性が叫ばれていましたが、その傾向が明確に表れた格好になっています。

 

BEC・・2014年のコメント募集前より、出題内容の拡大が叫ばれています。今回の改正により、MCSimulationWritten Communicationの全分野から出題されることとなり、受験生にとってはこれまで以上に困難な科目となりそうです。時間が1時間増加する点は朗報ですが、MCの問題が少ししか減少しない中で、Simulation4~5問も出題されることを考えると、時間が増えたことは決して朗報ではなく、改正後もかなり急いで問題を解かなければならないと思われます。

ただし、MCについては、配点が85%から50%と大幅に減少することとなるため、合否に対するMCのミス(=誤答)の影響は、従来よりも軽微になるものと予想されます。改正後は、BECについては、MCだけに依存せずに、まんべんなく出来なければ合格はおぼつかないと思われます。

ちなみに、この科目の特徴は、他科目にはないWritten Communicationが課される点ですが、Written Communicationからの得点を阻害しているのは、この科目の試験範囲が広大であることと、日本人が英文表記に慣れていないことに起因しています。英文表記には慣れるしかありませんが、試験範囲の対策としては、意思決定等の管理会計及びファイナンスに関する知識を備えて試験に臨むことが不可欠のようです。

 

・全体的な結論ですが、AUDBECが難化、REGは変わらず(試験時間の面ではやや易化?)、FARは易化するのではないかと考えられます。

MCの配点は、全科目とも50%に引き下げられることが予定されています。配点の減少に伴い、MCの問題数が減少するわけですが、これは解答を間違えられないMC問題が増加したことをも意味します(これは、特に、MCの問題数が比較的少ないFARBECに対して該当します。ただし、上述した通り、BECにおいては、合否に対するMCの出来具合の影響は、従来よりは軽微になると思われます)。そのため、MCについては、改正後は、ケアレスミスも含めて、できるだけ間違えないようにしなければならないと思われます。

それとともに、今後は、全科目においてシミュレーションの配点が増加することが予定されているため、改正後は、シミュレーション対策を十分に行わねばならなくなることは言うまでもありません。

 

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英語の本文は、以下のHPで閲覧することが可能です。

(ただし、改正点の数を分かり易く数字で並べるとともに、科目の変更点を表す表については、その重要性に鑑み、問題数と配点を統合して表記すべく、変更致しました。)

 

http://www.journalofaccountancy.com/news/2015/sep/cpa-exam-proposed-changes-201512929.html?utm_campaign=Alerts&utm_source=Alerts&utm_medium=push