米国税制情報  (U.S. Tax Guide)

2017年 オバマ大統領予算教書 : 税制改正部分

 (Budjet Messages of the President; Tax Changes)

2017年 オバマ大統領予算教書

 

今回は、オバマ大統領の最後となる、2017年予算教書から、税制改正部分を紹介したJoA(Journal of Accountancy)の記事を取り上げます。

 

まだ税制改正案であり、連邦議会において採択されていないため、知識として覚える必要はありません。

しかし、中には、現行制度の限度枠を改正するものもあるため、現行制度の限界部分を確認するという意味では、タックス・プランを行う方々や、受験生の方々にとっても有益な情報であるといえるでしょう。

 

いずれにせよ、お時間のあるときに読んで頂く程度で結構な内容だと思います。

 

 

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大統領の予算案は、数多くの税制改正を提案している

 

アリステア・M・ネビウス J.D.

翻訳 神山 直規

 

2016210

 

バラク・オバマ大統領は、火曜日(2016210日)に、連邦政府の2017年の財政年度に対する、自己の最後の予算案を公表した。

 

それは、事業に広範な影響を与えるとともに、教育、医療、退職に影響を与える租税条項を含んでいる。

 

同予算案は、行政が、法の制定を望む、改正要望リストを示したものである。

 

しかし、共和党議員が多くの議席を占める連邦議会では、大統領提案の多くを支持しそうにない状況である。

 

その数多くの税制改正案は、次の通りである。

 

 

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■勤労所得税額控除(EITC)

 

 

予算案では、(親権がない親を含めた)税制適格となる子供がいない納税者に対して、第32条の勤労所得税額控除を拡張させることを提案している。

 

これらの納税者において利用可能な税額控除額は、おそね1,000ドルに増額されることとされている。

 

また、同税額控除について、21歳から24歳、並びに、65歳及び66歳の勤労者に対して利用可能とすることとしている。

 

予算案では、共働きの婚姻している夫婦に対して、新たに、500ドルまでの第2の勤労所得税額控除を創設することとしている。

 

また、同税額控除は、調整済総所得金額(AGI)120,000ドルを超える夫婦に対して、逓減させることとしている。

 

 

■児童等養育費税額控除

 

予算案では、5歳未満の子供を持つ家族に対して、子供一人毎に3,000ドルの児童等養育費税額控除の金額を、本質的に3倍にすることとしている。

 

それは、また、逓減限度(開始)額を増額させているため、年間の調整済総所得金額(AGI)120,000ドル未満である納税者に対しては、(税額控除額の逓減は)適用されない。

(同税額控除は、現在、調整済総所得金額(AGI)15,000ドルを超える納税者に対して逓減(を開始)している。)

 

しかし、同予算では、また、児童養育費に対する柔軟性のある支出口座を排除している。

 

 

■教育に係る税額控除

 

予算案では、第25A項の生涯学習税額控除を、米国人教育機会税額控除にまとめることを提案している。

 

それは、また、米国人教育機会税額控除を5年間利用可能とするとともに、1.500ドルまで還付可能と拡張させるものである。

 

(現在、同税額控除は、4年の間、利用することが可能であり、1,000ドルまで還付可能である。)

 

(給付型奨学金である)ペル・グラントは、課税が免除されるとともに、米国人教育機会税額控除の計算からも除外されることとなる。

また、学生ローンにおける債務免除は、もはや課税可能な債務免除所得とみなされることはなくなる。

 

 

■コミュニティー・カレッジ

 

予算案では、コミュニティー・カレッジにおける投資不足を充足し、かつ、税制適格となるコミュニティー・カレッジの卒業生を雇用する雇用者に対して-コミュニティー・カレッジ提携税額控除と呼ばれる-新たな5,000ドルの税額控除を創設している。

 

予算案では、コミュニティー・カレッジを、2年間、無料にするために、連邦と州の提携を創設させることとなる、米国カレッジ約束と呼ばれるプログラムに資金を供給することを要求している。

 

 

■退職貯蓄

 

予算案では、立入りを退職年金プランに加入することを増加することを目的として、そして、退職後の貯蓄と利益をより平易に異動可能とすることを目的として、数多くの提案が含まれている。

 

これらは、退職年金プランを申し込まない10人を超える従業員を雇う雇用者に対して、自動的にIRAに登録することを要求することを含んでいる。

 

100人未満の従業員を雇用する事業者は、自動的にIRAの登録を申し込むことにより、4,500ドルまでの税額控除を得ることとなる。

 

 

■高所得の納税者に対する税制上の優遇措置の減少

 

予算案では、調整済総所得金額から一定の所得控除と課税除外の金額、及び、すべての項目別控除を制限することとしている。

 

予算案では、33%35%、及び39.6%の税率適用域における納税者の課税(対象)所得を減少させることとなる、特定の課税除外と所得控除の額を28%に減少させることを提案している。

 

純投資所得の定義は、総所得と、雇用税が課されることがない個人の事業取引から生じた利益を含むことに拡大させることとしている。

 

予算案では、また、同じく高所得の納税者に対して、(慈善寄付控除後)少なくとも30%の税率により税金を支払うことを要求する、(予算では、「正当な分け前税」と呼ばれる)いわゆるバフェット・ルールの履行を提案している。

 

 

■キャピタル・ゲイン課税

 

予算案では、キャピタル・ゲインに対する最高税率は、(3.8%の純投資所得税を含む)28%に増額されることとなる。

 

それは、また、含み益のある財産の移転を売却とすることにより、贈与及び遺贈における基礎価額(Amount of Basis)のステップ・アップ(増額)を排除しているため、贈与者または遺贈者は、こうした移転を行う際、キャピタル・ゲインを実現させたこととなる。

 

予算案では、利子について、キャピタル・ゲインとする代わりに、通常の所得に対する税率により課税を行うこととしている。

 

 

■法人税改正

 

予算案では、法人税率を28%に削減することとしている。

 

それは、また、外国の所得に対して、その所得が得られた時点において、19%の最低税率を課すこととしている。

 

最低税率を課税することに移行するのに伴い、それまで、課税されていなかった外国の所得に対して、14%の税率で一度に課税を行うこととしている。

 

予算案では、また、アーニングス・ストリッピング(利益剥奪)とコーポレート・インバージョン(法人の反転)に対して、更なる条項を提供している。

 

 

■米国に仕事をもたらす刺激策

 

予算案では、現在、海外で行われている事業ラインを削減し、または除去し、同様の事業取引を米国で開業し、拡大させ、または、さもなければ移動するための税制適格となる費用の20%に相当する税額控除を提供することを提案している。

 

 

179条費用

 

予算案では、179条による費用化の最高限度額を、100万ドルに増額させ、景気変動によって指標づけられることを提案している。

(逓減開始額は200ドルのままであり、景気変動により指標づけられる)

 

 

■中小企業に対する簡易な会計

 

予算案では、ある特定の会計規定に対する例外を認めるために、年間平均総収入金額が2,500万ドルを限度とする統一小規模事業を創設することとしている。

 

この資格を有する企業に対しては、現金主義を適用することが認められており、統一資産化準則の適用を受けずに、財務会計で適用している方法か、または、適切に所得を反映する方法により、棚卸会計に対する処理を行うことが認められている。

 

 

■開業費

 予算案では、控除可能な開業費の上限を(5,000ドルから)20,000ドルに増額させようとしている。

 

この金額は、その出費が20,000ドル(現在は50,000ドル)を超えた場合には、その超過額の分だけ減少される(しかし、ゼロより低くはならない)。

 

 

■研究開発費税額控除

 

予算案では、研究開発税額控除の申請を行うことが可能な納税者において、20%の通常税額控除か、または14%の簡素化税額控除を申請することが可能な、現在の二つに分岐した第41条の研究開発税額控除を廃止することとしている。

 

その代わり、同予算案では、18%の税額控除を行う単一の算式を創設することを提案している。

 

 

■タバコ税の増税

 

予算案では、看護師、ソーシャル・ワーカー、及び、その他の専門家による就学前の対応を拡張させるとともに、家庭訪問プログラムを拡張させるための資金を確保するため、タバコ税を増税しようとしている。

 

 

クリーンエネルギー

 

予算案では、クリーンエネルギー投資のために、いくつかの税制優遇措置を簡素化し、拡大させ、かつ、恒久化することとしている。

 

それは、また、炭素キャプチャーの商業的開発、利用、及び保管に対して刺激策を提供するために、2つの新たな税額控除を創設している。

 

同予算案では、また、石油、ガス、及び、その他の化石燃料生産者に対して、税金による補助金を提供することにより、年間40億ドルを削除することとしている。

 

 

■キャデラック税

 

予算案では、(キャデラック税として知られる)雇用者支援による高額費用健康保険に対する、第4980(l)項の消費税を改正することを提案している。

 

キャデラック税は、連邦議会により廃止のための努力が行われてきた。そして、最近、制定された統合予算法(CAA2016年、P.L.114-113)は、その発効日を2020年に延期した。

(それは、当初、2018年に発効することが予定されていた。)

 

予算案では、キャデラック税が適用される限度額は、現行法における限度額と各州の保険市場におけるゴールドプランの平均保険料の、いずれか高い方の金額と同等の金額に修正されるであろう。

 

これは、まさに、雇用者が高額の費用が掛かる州にいるために、税金の支払いから雇用者を守ることを意図したものである。

 

 

■遺産税

 

予算案では、遺産税について、(最高)税率45%、遺産税と世代飛ばし移転税に係る基礎控除を350万ドル、そして贈与税控除を100万ドルとする、2009年の(景気変動による指標がない)形式に戻すことを提案している。

 

予算案では、また、遺産税の夫婦控除の適用を受ける資格がある財産、及び、連邦贈与税申告書により申告することが義務付けられる財産を含むために、第1014(f)項における申告一致要件が適用される新たな基礎価額が付される財産を拡大しようとしている。

 

 

■石油税

 

予算案では、石油に対して、1バレル当たり10.25ドルの「料金」を提案している。

 

行政管理予算局は、この条項により、10年にわたり3,190億ドルの税金が回収されるであろうと推定している。

 

 

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アリステア・ネビウス (anevius@aicpa.org)氏は、JofA の税務編集長である。

 

以下の記事もご参照ください。

 

http://www.journalofaccountancy.com/news/2016/feb/budget-proposes-many-tax-changes-201613856.html?utm_campaign=Alerts&utm_source=Alerts&utm_medium=push#sthash.DQ1Ubcq1.dpuf