土地の貸付けが駐車場の貸付に該当することから、その貸付収入が消費税の課税売上取引に該当するとした事例

 土地の貸付けが駐車場としての土地の利用に該当することから、そうした土地の貸付けによる収入は消費税の課税対象になるとした事例を紹介致します。

 これは、大阪地方裁判所 平成28年2月25日判決を根拠としています。

 

1.事件の概要

 

 本件は、複数の土地(以下「本件各土地」という。)を所有し、駐車場として賃貸しているX(原告)が、所轄税務署長から本件各土地に関して平成21年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下、併せて「消費税等」という。)の決定処分並びに無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件決定処分等」という。)を受けたことから、本件各土地の貸付けは非課税取引である土地の貸付けに該当するとして、本件決定処分等の取消しを求めた事案である。

 

 

 

2.本判決の要旨

 

 

(1) 消費税法(以下「法」という)は、国内において事業者が行った資産の譲渡等(事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供)には、消費税を課する旨規定する(法4①)一方、土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)には消費税を課さないこととしている(法6①)。このように法が土地の貸付けを非課税取引としている趣旨は、土地は使用や時間の経過によって摩耗ないし消耗するものではなく、土地そのものの消費を観念することができないことから、消費に負担を求める税である消費税を課する対象から除外するという点にあるものと解されるところ、かかる趣旨に鑑みれば、土地の使用を伴う取引であっても、駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供について消費を観念することができるから、単なる土地の貸付けと同列に論じることはできず、消費税の課税対象とすることが合理的である。消費税法施行令(以下「施行令」という)8条は、このような観点から、土地の貸付けにつき、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を消費税の課税対象として定めているものと解される。

 

 

(2) Xは、賃借人は契約車両の駐車のためにのみ使用することができるとの約定で本件各土地に係る駐車場を賃貸し、賃料収入を得ていたこと、本件各土地は、それぞれその出入口に駐車場であることを示す看板が設置され、地面が平坦に整地されており(C駐車場については全面にアスファルト舗装がされ、そのほかの駐車場については地面に砂利が敷かれている。)、ロープ又は白線及び番号が記載されたコンクリートブロックや番号札により各車両が駐車するための区画割りがされているなど、いずれも駐車場としての用途に応じた土地の整備がされていること、Xは、本件課税期間において、本件各土地につき駐車場として賃貸するために修繕を毎年行い、そのために費用を支出していることがそれぞれ認められる。

 これらによれば、Xは、本件課税期間において、本件各土地を、更地として貸し付けていたものではなく、駐車場として各賃借人に賃貸していたものであり、Xによる本件各土地の貸付けは、駐車場としての利用に伴って本件各土地を賃借人に使用させるものであったと認められる

 

 よって、Xによる本件課税期間における本件各土地の貸付けは、施行令8条所定の駐車場の利用に伴って土地が使用される場合に当たるから、消費税の課税対象である「資産の譲渡等」に該当すると認められ、Xは本件各土地の貸付けによって得た収入について消費税等の納税義務を負うものと解するのが相当である。

 

 

(3) Xは、施行令8条にいう「施設」とは、土地ではなく施設そのものに利用価値があるようなものを指し、土地の利用がその施設を利用するための道具と評価されるような施設を伴ったものである必要があると主張するが、土地の貸付けを非課税取引とする一方で、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を非課税取引から除外する法及び施行令の規定は、駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合には、駐車場という施設の貸付け又は車両の管理という役務の提供において消費を観念することができることを根拠とするものと解されるところ、駐車場としての設備の種類、程度は様々なものがあると想定されるが、立体駐車場、シャッター付き車庫といった建物又はこれと同等の設備の利用を伴うものでなければ駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たらないと解することはできない

 

 

 

3.参考

 

 

 法は、別表第一の一号により土地の貸付けについては消費税を課さないとしているが、施行令8条において、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は、土地の貸付けから除外するとしている。

 本件は、本件各土地が駐車場として貸し付けられて事実を前提として、その貸し付けている駐車場の状態が、施行令8条でいう駐車場その他の「施設の利用に伴って土地が使用される場合」に当たるか否かを争点として、最高裁まで争われた事件であり、いずれの判決も駐車場施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たるとしてXの主張が排斥されている(最高裁は上告理由に当たらないとして本案審理をすることなく棄却)。

 

 本判決では、施行令8条でいう「施設」について、施設そのものに利用価値があるようなものを指すとのXの主張に対し、「立体駐車場、シャッター付き車庫といった建物又はこれと同等の設備の利用を伴うものでなければ駐車場という施設の利用に伴って土地が使用される場合に当たらないと解することはできない」として排斥しているところ、本件に係る大阪高裁平成28年7月28日判決においても、ほぼ同様の理由によりXの主張を排斥しているが、施行令8条の「駐車場」について、「屋根付きやシャッター付き、ビル式駐車場のみを指すのではない。駐車場として使えるように通路部分も含めて整地し、区画割のためにロープや白線を設置し、駐車場所を特定するために番号が記載されたコンクリートブロックや札を設置することによって、限られた面積の土地上において相当数の車両を効率的かつ整然と駐車させることができるという効果がもたらされているのであれば、そのような設備も駐車場ということができる。」としてその意義をより明確に判示しているところであり、高裁判決も含めて裁判所の判断は、消費税法基本通達6-1-5でいう「その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないときは、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる」とする解釈を合理的なものとし、それを踏まえた上での判断であり、今後の実務の参考となる。