国税庁が、「国庫補助金等の交付事業年度後に固定資産等を取得等した場合の圧縮記帳の取扱いについて」に係る事前照会の回答を公表しました。

 国税庁は、このたび「国庫補助金等の交付事業年度後に固定資産等を取得等した場合の圧縮記帳の取扱いについて」に係る事前照会の回答を公表しました。

 

 事前照会の回答によれば、国庫補助金等の交付を受け、その返還不要が確定する事業年度後の事業年度においてその交付の目的に適合した固定資産の取得等した場合には、文理上、法人税法第42条第1項及び第43条第1項が規定する場合のいずれにも当たらないようにも思われますが、制度の趣旨から、国庫補助金等の交付を受けた事業年度においては、これを仮勘定として経理し、固定資産を取得等した事業年度において、当該仮勘定を取り崩して益金の額に算入するとともに、固定資産を取得等した事業年度において、当該固定資産につき圧縮記帳の適用を受けることができると回答しています。

  

 

【事前照会の趣旨】

 

 当社は鉄道事業を営む法人であり、機構及び市から補助金(以下「本件補助金」といいます。)の交付を受けて、鉄道駅等の改良工事事業(以下「本件工事」といいます。)を予定しています。

 本件工事は平成25年度から平成28年度にかけて行うことを予定しており、本件工事に伴い完成する資産(以下「対象資産」といいます。)の取得等の時期は、本件工事が完了する平成28年度となります。

 本件工事に伴い交付を受ける本件補助金は、各年度に工事の進捗状況に応じて交付されるものであり、当社は、毎年度、機構及び市に対して「補助事業完了実績報告書」を提出し、毎年度の工事の進捗状況を報告し、その後、「補助事業完了実績報告書」の提出を受けた機構及び市は、その内容を審査の上、その年度に交付すべき補助金の額を確定し、「確定通知書」により当社に補助金額を通知することとされています。そのため、各年度において、機構及び市から本件補助金について「確定通知書」を受領し、交付を受ける補助金の額が確定していることから、各年度において、返還を要しないことが確定しているものと考えられます。

 本件補助金については、前述のとおり、交付を受ける各年度において、返還を要しないことが確定しているものの、対象資産の取得等の時期が、補助金の交付を受けた事業年度後の事業年度となりますが、このような場合における国庫補助金等や固定資産の税務上の取扱いについては明文上明らかではありません。

 

 そこで本件補助金については、対象資産が完成するまでの間、仮勘定として経理し、対象資産を取得等した事業年度においてこれを取り崩して益金の額に算入することとして差し支えないでしょうか。

 また、対象資産については、これを取得等した事業年度において、圧縮記帳ができると解して差し支えないでしょうか。

 

(注)機構から交付を受ける補助金は、法人税法施行令第79条《国庫補助金等の範囲》に掲げる補助金に該当します。 

 

 

【事前照会に係る補助金等の経理処理】

 

 当社は、以下のとおり、対象資産が完成するまでの間、本件補助金の額を仮勘定として経理するとともに、本件工事に伴い支出する工事代金を建設仮勘定として計上し、対象資産が完成した事業年度において、建設仮勘定を有形固定資産勘定に振り替えた上、圧縮記帳を行う経理処理を予定しています。

 

 イ 補助金受領時

   (借)預金 XXX       (貸)圧縮未決算特別勘定 XXX

 

 ロ 工事代金支払時

   (借)未払工事代 XXX    (貸)預金 XXX

 

 ハ 期末建設仮勘定振替時

   (借)建設仮勘定 XXX    (貸)未払工事代 XXX

 

 ニ 固定資産取得時(本件工事完了後)

   (借)有形固定資産 XXX   (貸)建設仮勘定 XXX

   (借)圧縮未決算特別勘定 XXX(貸)特別利益 XXX

   (借)特別損失 XXX     (貸)有形固定資産 XXX

 

 なお、本件補助金をもって取得等する対象資産は、その交付の目的に適合したものであることを照会の前提とします。

 

 

【事実関係に対する事前照会者の求める見解となることの理由】

 

 法人税法第42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》第1項は、内国法人が、各事業年度において固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受け、当該事業年度においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をして、当該事業年度終了の時までに国庫補助金等の返還を要しないことが確定した場合には、国庫補助金等のうちその固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法等により経理したときは、その減額し又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。

 また、法人税法第43条《国庫補助金等に係る特別勘定の金額の損金算入》第1項は、内国法人が、各事業年度において固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等の交付を受け、その事業年度の終了の日までに国庫補助金等の返還を要しないことが確定しない場合には、国庫補助金等の額に相当する金額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において特別勘定を設ける方法等により経理したときは、その経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する旨規定しています。

 本件補助金は、法人税法施行令第79条に掲げる補助金及び市の補助金であることから国庫補助金等に該当することは明らかですが、前述のとおり、対象資産の取得等に係る本件工事は複数年度にわたるものであることから、当社は、本件補助金の交付を受け、その返還不要が確定する事業年度後の事業年度においてその交付の目的に適合した固定資産の取得等をすることとなり、文理上、法人税法第42条第1項及び第43条第1項が規定する場合のいずれにも当たらないようにも思われます。

  しかしながら、国庫補助金等の圧縮記帳の制度は、国庫補助金等の交付を受けた場合には、課税所得の金額の計算上、益金の額に算入されることから、その国庫補助金等によって取得等を予定された資産の取得資金が税の分だけ不足することとなり、それだけ国庫補助金等の交付の目的が達成できなくなる可能性があるため、その調整のための手段として設けられているものと思われます。

  当社が交付を受ける本件補助金は、その交付対象が鉄道駅の改良のための工事費等であり、固定資産の取得等をその交付目的とするものであることからすれば、本件のように国庫補助金等の交付時点で本件工事が完了せず固定資産の取得等ができなかった場合であっても、国庫補助金等の交付時点で固定資産の取得等が見込まれる限り、国庫補助金等の交付時点では課税関係を生じさせず、固定資産の取得等をした事業年度において圧縮記帳の適用を認めることが制度の趣旨に合致するものと考えます。

 

 したがって、本件補助金については、交付を受けた事業年度においては、これを仮勘定として経理し、固定資産を取得等した事業年度において、当該仮勘定を取り崩して益金の額に算入するとともに、固定資産を取得等した事業年度において、当該固定資産につき圧縮記帳の適用を受けることができると考えます。

 

 

◎ 詳細につきましては、国税庁のホームページの「国庫補助金等の交付事業年度後に固定資産等を取得等した場合の圧縮記帳の取扱いについて」をご覧ください。

 

 

 なお、本ニュースは、一定の条件下における事実に対する税務上の結論を公表するものであり、すべての場合において適用されることを保証するものではありません。適用に当たっては、必ず、関係機関に事前にお問い合わせ頂くことが必要ですので、ご留意ください。